事業承継対策の必要性 8 (生前贈与や遺言の注意点)
2012年4月30日
平素はお世話になります。
経営相談、社員教育・研修、FP相談等 ヒューマネコンサルティング株式会社 代表の阿部です。
これまで7回にわたって、「事業承継対策の必要性」について書いてきました。
前回は、「自社株式や事業用資産を後継者に集中させていく方法について」でした。
生前贈与や遺言は、一般的に、
「経営者が所有している自社株式や事業用資産を後継者に集中させる方法として有効」ですが、
それぞれにメリット・デメリットなどもありますので、注意が必要かと思います。
そこで今回は、その場合の主な注意点などについて、書いてみたいと思います。
(1)生前贈与
経営者の生存中に、自社株式や事業用資産の所有権を後継者に移転する方法です。
これは、遺言と違って、
一度生前贈与を行うと、経営者は自由に撤回することができませんので、
自社株式などを譲り受けた後継者の地位が安定するのもメリットかと思われます。
主な注意点
*自社株式や事業用資産を相続人である後継者に贈与した場合には、
「特別受益」となりますので、遺留分による制約を受けます。
*「仮装の贈与ではないか」といった疑問を持たれないようにするため、
贈与契約書を作成し、株主名簿の書換・所有権移転登記などの名義変更手続を終えておくことも重要かと思われます。
(2)遺言
自社株式や事業用資産を後継者に相続させる旨又は遺贈する旨の遺言を作成し、
経営者の死亡時に後継者に、これらを取得させる方法です。
遺言には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があり、
それぞれの以下のような特徴がありますので、ご参考まで。
自筆証書遺言
作成方法:遺言者が、日付、氏名、財産の分割内容等の全文を自書し、押印して作成。
メリット:
・遺言者が単独で作成できる。
・費用があまりかからない。
デメリット:
・遺言の紛失・隠匿・偽造の可能性がある。
・文意不明、形式不備等により無効となるリスクがある。
・家庭裁判所の検認手続が必要。
公正証書遺言
作成方法:遺言者が、原則として、証人2人以上とともに公証役場に出かけ、公証人に遺言内容を口述し、
公証人が筆記して作成。
メリット:
・公証役場にて保管されるため、紛失・隠匿・偽造の可能性がない。
・遺言の形式不備等により無効になるリスクがない。
・家庭裁判所による検認手続が不要。
デメリット
・作成までに手間がかかる。
・費用がかかる。
尚、主な注意点としましては、
いずれの場合におきましても、
※生前贈与の場合と同様に、遺留分による制約を受けます。
※遺言者である経営者は、遺言の撤回ができますので、
生前贈与の場合に比べて、後継者の地位が不安定になりがちだと思われます。